洋服解読所



















90's JIL SANDER by J.S. Technicianl Cut Stand_Collar Tailored JKT
¥32,500 税込
残り1点
本人期のジルサンダーです。
歴代ここを任されるファッションデザイナーは皆本当に天才揃いなので本人期に特別なアドバンテージがある訳ではありませんが……みたいな能書きを少し前にした覚えがあります。
ちょっとだけ撤回。
これは本人期ならではのクオリティかもしれません。
フロントはダブルジップ開閉のスタンドカラー仕立て。
着方によっちゃ少し開けて、低い襟をわざわざ倒してノッチドラペルを決め込むことも出来ます。
で、そこのフロントファスナーも涙型のオールドririが使われてて……。
違う違う。
そんなのいい。
この服で見るべきは絶対にカッティング。
写真で伝わるかな……。
3面体テーラードをベースにしてるんですが、前身頃と脇身頃は癒着してひとつなぎに。
そして前身/脇身の切替シームの代わりに入ってるのが変則的なディアゴナルダーツ。
バストトップの少し下から始まり、サイドウエストを通ってヒップに向かう…という、何とも掟破りな設計。
掟破りではあるものの、その位置で求められている仕事は全部踏まえ、その上での遊び。
そしてそのディアゴナルダーツに平行に発生しているのが 玉縁不使用完全独立型 のスラッシュポケットです。
通常の独立ポケット作りには縫製仕様の都合上必ず玉縁布(たまぶちぬの)が必要なんですが、それを無理やり排して縫製技術によって思い切りミニマルに作り切った意匠です。
メリットとしては「カッコ良い」。
デメリットとしては 玉縁のおかげできちんとポケット口が閉まっていた所、どうしても空間が出来る。
お分かりいただけますでしょうか、なんか傷口みたいになってるでしょう、ポケット口が。シャッて。
ちなみにこれ縫うの滅茶苦茶難しいです。
本当に浪漫のためだけの設計ですけれど、いやそれ言い出したらデザイナーズクロージングなんて全部そうじゃないですか。
そうだった。それでいいんだ。
自分の理想を確固として描き、それを貫くためにありとあらゆる手段/意匠/遊びをデザインする。
時代を力強く引っ張ったジルサンダーが用いたヒリつくミニマリスムを象徴するディテール。
さあ、このジャケットは袖も凄い。
最後に適当な簡略図を書いてますのでご参照ください。
この袖、全部繋がってるんですけれどやってる事は2枚袖テーラリングなんです。
袖の縦シーム前側を肘部分でストップ。
そしてそのストップ部分から左右に延長。
内肘をつまむダーツを袖の縦シームにドッキングしたカット。
発想がお洒落過ぎる。
こんなの、パターン引いたことが無ければナンノコッチャという感じかもしれません。
もうシュートすれば十中八九入るのに、ゴール前で延々とパス回しを続けるような、その過程でアクロバティックなトリックを織り交ぜるような。
見た目死ぬ程シンプルなんですけれど、やってるマニュピレーションはそんな感じです。
ミニマルという名のファンタジー。
Made in ITALY
riri_zip
サイズ表記34
肩幅:40
身幅:45
着丈:71
袖丈:61
-
レビュー
(314)
-
送料・配送方法について
-
お支払い方法について
¥32,500 税込