洋服解読所



















80-90's FERRE JEANS Indigo-Linen Airy Coverall JKT
¥45,000 税込
SOLD OUT
ジャンフランコ・フェレが作るカバーオール。
骨組みはそのままに、既に完成されたクラシックなマスターピースを丁寧にトレース。
内ポケットの位置とか
チェーンホールの位置とか
各ステッチの本数やライン設計
襟構成や見返しの仕様に至るまで
丁寧に拾ってます。
ボディは豪放な二面体で、袖も二枚構成。
あんまりヨーロッパっぽくなり過ぎないよう、前振りとかも控えめ。
前オーナーが着古してちょくちょく汚れてるのも、またカバーオールっぽくて良いですね。
と
ここまでが
このジャケットデザインの「サンプリング」の部分。
ここから先が
このジャケットデザインの「リミックス」の部分。
表面上、アメリカ黄金時代の輝きを引用したカジュアルジャケットなんですが、もうちょっと深い背景がある。
先ず生地にインディゴリネンが使われている点。
良い生地なんだこれが……。
アメリカのカバーオールでは殆ど(全く?)使われていなかったこの生地は、このカバーオールという形式が生まれる前のヨーロッパのワークジャケットで重用された生地です。
2度の世界大戦を大凡の過渡期としてその覇権がヨーロッパからアメリカに移る、その時代の流れを映写したような、要素の掛け合わせ。
こうした生地選定に加えて、ディテールにももう一花。
先程前振りを抑えた平坦な袖設計……といった旨を記載しましたが、豪傑による西洋の美意識は完全には消えていません。
(隠し切れていない、といった方が適切か)
それは 袖山のいせ込み*です。
スチームアイロンで最低限軽くしましたが、身頃高の仕立てにも関わらず容赦無くぶっ込まれた“いせ分量”は、雨降り袖よろしく、深いインディゴリネンに情緒溢れる縦皺を落とします。
これは合理性重視のワークウェアには殆ど必要の無い、西洋美意識由来の贅沢ディテール。
それをシワの生まれ易いリネン生地で実践するというのがまた、最高に洒脱です。
楽しむ上で少しコンテクストが必要かもしれませんが、どうかそれを障害に思わずに一歩踏み込んでみて欲しい。
それらは小難しくするためにあるんじゃなくて、より深く、強烈に、遊び心を表現するためにあるんですから。
Made in ITALY
サイズ表記38
肩幅:54
身幅:61
着丈:74
袖丈:63
・襟裏小傷あり
---
*いせ込み
……上物の袖山に入る「余り分量」のこと。
実は「身頃のアームホール」と「袖のアームホール」は大きさが違います。
「袖のアームホール」の方が数センチ大きいんです。
(これは洋裁学校とか通らなきゃ分からない事)
この数センチを少しずつ圧縮しながら、袖山にボリュームを持たせて袖付けをすることを「いせ込み」と言います。
---
そしてこのいせ込み
圧縮するってことはギャザーってこと?
という疑問が湧くと思いますが、大体そう。
シワが発生するかどうか、ギリギリのラインを攻めるのです。
アームホールを縫合した後、その縫い代を何方に倒すかでその袖は「身頃高」と「袖高」の2つに分けられます。
文字通り、身頃が上に乗っかるように倒すのが「身頃高」
逆に、袖が上に乗っかるように倒すのが「袖高」です。テーラードジャケットは世に存在する95%がこの「袖高」。
この「袖高」を選んだ時、袖山付近に「いせ込み」を行うことで、ふわり綺麗に美しく盛り上がった袖山が形成出来る、と言う訳です。
噛み砕くとバウムクーヘンみたいな感じ。
外側ほど広くなるよねって。
そしてそれを、“裄綿”をはじめとする各種芯材で丁寧に補強しながら構築していくのが基本的なテーラードジャケット。
逆に
そうした構築的な要素を排して軽く仕立てたのが雨降り袖。
ナポリ発祥と、言われてはいる。
伊達男の軽妙な足取りが目に浮かぶでしょう。
これは「袖高」にこだわらないから、各種芯材で補強していたバウムクーヘン構造が崩れます。
その結果、外周を走る余裕として持たせてた分量は、今度こそ正真正銘の「ギャザー」となって、袖山に縦皺(雨)を降らせるのです。
---
こうした2つの美意識が、ジャケットの肩部分には流れています。
こうした細かい部分の面白さを知らずに買うには、デザイナーズウェアは高過ぎると思います。
知った後はこの世で1番楽しい娯楽に思えると思います。
-
レビュー
(314)
-
送料・配送方法について
-
お支払い方法について
¥45,000 税込
SOLD OUT