洋服解読所











80's CLOSED by M&FG Apricot_Orange Technical Textile Cargo JKT
¥65,000 税込
残り1点
80's M&FGの中でも飛びっきりの白眉。
明るいアプリコットが目に眩しい、時代の在処を映すようなビジュアル。
多分合理性だけでは説明が埋まらない、不可解で独創的なカーゴポケットのシステムデザイン。
胸ポケットのボディが折り返ってフラップの体を成すものの、そこに別に新ポケットは無いし、そのフラップはサイドウエストから伸びる共布のコードで繋ぎ止められてる。
身体ではなく洋服の機能を拘束するようなボンテージ文脈。
後身頃に食い込むようにカーブするサイドシームと、それを追いかけるウエストポケット。
それらが行き着いた先では大量のタックが畳まれ、バックウエストベルトに大迫力のブラウジングが設計されている。
テーラードジャケットのビジュアルを追いかけてはいるものの、こうしたブルゾン要素もミックスされたバランス。
なんならテーラードジャケットを目指したラペルは製図クオリティが微妙なんですよね。
ラペルの返りがかなり甘い。
以前紹介した同時代のリバーシブル・テーラードジャケットでもそうだったんですが、この部分の製図クオリティはM&FGを象徴する《とある要素》と喧嘩しがち。
とある要素。
すみません勿体振りました。
《前衛的なテキスタイルデザイン》です。
冒頭に述べた眩しいアプリコットの このコットンファブリックは、注意深く凝視するとピッグレザーみたいな毛穴っぽい点々があるんです。
コットンなのに???
これはね
表地の裏面に重ねられた薄いシンサレートを生地に癒着させるためのニードルパンチ。
複数の生地を重ねて針で刺し、その繰り返しによってその繊維を少しずつ絡ませて癒着させる手法。
このニードルパンチを生地を作る段階で取り入れて、規則的な点々模様入りのふっくらしたコットンファブリックが完成するというわけ。
そう、このジャケットは厳密に定義すれば「パデッドジャケット」なんです。
でもこの服作りに
「中綿を入れる」って作業行程は無い。
何故なら服作りのずっと前、生地デザインの時点でドッキングされてるから。
で、そうなると裏地の選定理由も見えてくる。
生地の段階で少し厚みのあるデザインテキスタイルを縫い合わせると、生地ボリュームに比例した縫い代が生まれる。
このボリューミーな縫い代は、そのゴロつきは、華奢で滑りの良い薄手のサテンじゃカバーし切れない。
だから着心地を多少犠牲にしてでも、この攻めたテキスタイルデザインの尻拭いをするように 厚手のコットンライニングが選ばれる、という順序です。
多分CLOSEDでもALDO CIAVATTAのテキスタイル供給はあったんじゃないかと踏んでます。
CIAVATTA?誰?
って方はこのショップで「BALL」と検索して辿り着いてください。
彼の創意に満ち溢れたエゴイスティックなテキスタイルデザインと、それに一切手加減する気の無いM&FGの自由なカッティングエッジ。
本当に縫製士泣かせなデザインだと、心の底から思います。
この時代において無類の影響力を誇った彼らですが、こうしたクレイジーピースは誰も真似しませんでしたね。
そりゃそう。
本当に難しいことしてるもん。
そのくせ、その難易度と利益は直接的には比例しない。
真似しても利益が生まれにくい。
レーベルは大きくなるにつれ、規模に伴せてビジネスのプロを入れます。
すると、こういう無茶苦茶な勢いで突っ走るようなピースから削られていく。
クリエイター達が本当に情熱と好奇心をぶつけられる作品はレーベルの成熟と共に少なくなり、振り返った時にそれらは《初期》と定義され大きな価値が付けられる。
でもこれは別に
後世の人間が希少性に託けて価値を吊り上げようってセンテンスじゃない。
本当に初期の服には情熱が宿ってる。
だから、いつか誰かが正しく価値を見出していく。
全部が全部そうじゃありませんが
これは
一般的な《ヴィンテージ》と
《デザイナーズヴィンテージ》の決定的な文脈の違いです。
Made in ITALY
サイズ表記44
肩幅:52
身幅:60
着丈:60
袖丈:59
全体的に着古されてます。
大きな傷や汚れはありませんが、裏地に少し汚れあり。
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